「心拍変動ってどんな指標なの?」
「ストレスを可視化できると聞いたけれど、職場の安全管理にどう役立つの?」
このような疑問をお持ちの方もいるでしょう。
心拍変動とは、心拍と心拍の間隔のわずかな変動を数値化した指標です。自律神経の働きと深く関係しており、疲労やストレス、睡眠状態などを把握するための指標として注目されています。
特に建設現場や工場では、猛暑環境や長時間労働、身体的負荷によって従業員のコンディションが変化しやすく、疲労やストレスの蓄積が労働災害につながりやすい職種です。そのため、心拍変動を活用した体調管理への関心が高まっています。
本記事では、心拍変動(HRV)の基礎知識やストレス・疲労との関係性を解説します。職場で心拍変動を測定するメリットやHRV測定機能付きのウェアラブルデバイスも紹介しているので、参考にしてみてください。
心拍変動(HRV)とは?心拍リズムのゆらぎを示す指標

心拍変動(HRV:Heart Rate Variability)とは、心拍と心拍の間隔(ミリ秒単位)のゆらぎを数値化した指標です。
健康な人の心臓は一定のリズムで動いているように感じますが、実際には心拍と心拍の間隔にわずかな変動が生じています。
ここでは以下3つのポイントから、心拍変動の基礎知識をさらに詳しく解説します。
- 心拍変動(HRV)と心拍数の違い
- 心拍変動(HRV)と自律神経の関係
- 心拍変動(HRV)の単位「ミリ秒(ms)」の意味
理解を深め、健康管理や職場での安全管理に役立てましょう。
心拍変動(HRV)と心拍数の違い
心拍数と心拍変動は、どちらも心臓の働きに関する指標ですが、示す情報が異なります。
心拍数は、1分あたりに心臓が拍動する回数(bpm)を表します。運動量や身体活動の強度に応じて変動するため、活動量の指標として使われます。
一方で心拍変動は、心拍と心拍の間隔のばらつきをミリ秒単位で表す指標です。自律神経の状態を反映するため、身体や精神のコンディションを推し量る指標として活用されます。
心拍数と心拍変動を組み合わせて確認することで、作業員の活動状態とコンディションの両面から状態を多角的に把握できます。
心拍変動(HRV)と自律神経の関係
自律神経とは、呼吸や心拍、体温、血圧などを無意識にコントロールする神経のことです。
自律神経は、身体を活動モードにする「交感神経」と、身体を休息・回復モードにする「副交感神経」の2つで構成されています。
副交感神経が優位のときは心拍変動が大きくなり、リラックスや回復状態であると考えられます。反対に、交感神経が優位のときは心拍変動が小さくなり、緊張やストレス状態である可能性が高いです。
自律神経は直接測定するのが難しい指標です。しかし、心拍変動を観察すれば、間接的にその状態を把握できます。
そのため、職場で従業員の疲労やストレスの兆候を早期に把握するための指標としても活用されています。
心拍変動(HRV)の単位「ミリ秒(ms)」の意味
心拍変動は「ミリ秒(ms)」という単位で表されます。1ミリ秒は1,000分の1秒を意味し、例えば50ミリ秒は0.05秒に相当します。
心拍と心拍の間隔はごくわずかな時間で変動するため、秒単位では細かな変化を正確に把握できません。ミリ秒単位で測定することで、心拍ごとのわずかな間隔の違いを精密に捉えられます。
心拍変動(HRV)の測定方法

医療機関で心拍変動を測定する場合は、心電図(ECG)を用いるのが一般的です。
取得したデータの解析方法には複数の種類があり、代表的なものとして以下が挙げられます。
| 分析の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 時間領域分析 | 心拍間隔のばらつきを数値化し、RMSSD(副交感神経の働きを反映しやすい指標)やSDNN(心拍変動全体の大きさを示す指標)などを算出する方法 |
| 周波数領域分析 | 心拍変動を周波数ごとに分析し、自律神経のバランスを評価する方法 |
| 5分間分析 | 5分間の心電図データを用いて心拍変動を評価する標準的な測定方法 |
目的に応じて解析方法を使い分けることで、ストレスや疲労、自律神経の状態をより詳しく把握できます。
日常的な計測には、ウェアラブルデバイス(腕や身体に装着して生体情報を測定・記録できる機器)の活用がおすすめです。装着したまま日常生活や作業を続けられるため、連続的に心拍変動を記録できます。
例えば、ミツフジ株式会社(弊社)が提供する衣服型の「hamon®」やスマートウォッチ型の「MITSUFUJI 03」には、心拍変動解析をベースにした独自アルゴリズムが搭載されており、猛暑リスク・ストレス・コンディションといった体調の変化をリアルタイムに可視化できます。
以下の記事では、ウェアラブルデバイスの主な種類やできること、選び方について詳しく解説しています。導入を検討している方は、あわせてご覧ください。

心拍変動(HRV)が高い・低いとはどういう状態か

心拍変動は「高ければ良い、低ければ悪い」と単純に判断できる指標ではありません。
ただし、一般的な傾向としては、高い値は自律神経のバランスが整い、心身が回復している状態を示し、低い値はストレスや疲労が蓄積している可能性がある状態と捉えられます。
職場の安全管理においては、絶対値ではなく「個人の平常値からの変化」を追うことが重要です。同じ数値でも人によって示す状態が異なるため、継続的なモニタリングと比較が欠かせません。
値が高い状態:心身が回復・リラックスしている
心拍変動の値が高い状態は、副交感神経が優位で、身体がリラックスまたは回復モードにあることを示します。
十分な睡眠や休養が取れている場合や、ストレスが少ない状態では、心拍変動が高くなる傾向があります。
心身のコンディションが良好で、自律神経がバランスよく働いている可能性が高い状態です。
値が低い状態:疲労・ストレスがたまっている
心拍変動の値が低い状態は、交感神経が優位で、身体が緊張・興奮状態にあることを示します。
過労や睡眠不足、強いストレスが続いている可能性があり、放置すると心身の健康リスクが高まります。
従業員の心拍変動が低下傾向にあると気付いた際は、休憩や睡眠の確保、作業負荷の見直しなど、回復を促す対策を検討しましょう。
正常値の目安の目安(年代・性別差)
心拍変動(HRV)の正常値は、年齢や性別によって異なります。
一般的に若い人ほど心拍変動の値が高く、加齢とともに低下する傾向があります。
また、若年〜中年では男性の方が女性より高い値を示すことが多いものの、研究によっては40歳以降に女性の方が高くなる可能性も報告されています。
健康な18〜30歳の男女628名を対象とした研究では、安静時の心拍変動(SDNN)の平均値は以下のとおりです。
| 性別 | SDNN(平均値) |
|---|---|
| 男性 | 約50ms |
| 女性 | 約56ms |
ただし、心拍変動は睡眠やストレス、運動量などによって日々変化するため、平均値はあくまで目安です。ほかの人の数値と比較するのではなく、自分自身の普段の値(ベースライン)から大きく変化していないかを確認することが重要です。
参考:年齢および性別による心拍変動の変化|J-STAGE
建設現場や工場で心拍変動(HRV)を測定する3つのメリット

心拍変動は、健康状態や疲労度を把握する指標としてさまざまな場面で活用されています。
特に建設現場や工場など、高温環境での作業や身体的負荷が大きい職場では、安全管理や健康管理にも役立てられています。
ここでは、建設現場や工場で心拍変動を測定する3つのメリットを紹介します。
- 作業員の疲労状態を把握できる
- ストレス状態を把握しメンタルヘルスケアにつなげられる
- 熱中症リスクの予測に活用できる
順番に見ていきましょう。
作業員の疲労状態を把握できる
心拍変動は疲労が蓄積すると値が低下する傾向があるため、数値の変化から作業員の疲労状態を客観的に把握できます。
疲労が蓄積した状態で作業を続けると、作業ミスの増加や、集中力・判断力の低下による労働災害につながりやすいです。そのため、以下のような対応を検討し、従業員のコンディションに応じた作業環境を整えることが重要です。
- 休憩時間を増やす
- 水分・塩分補給を促す
- 労働時間を短縮する
- 作業配分の見直す
心拍変動を継続的に確認すれば、疲労の蓄積を早期に把握し、労働災害の予防や安全な職場づくりにつなげられます。
メンタルヘルスケアにつなげられる
心拍変動はストレスが蓄積すると値が低下する傾向があるため、ストレス状態を把握する指標としても活用されています。
ストレスは自覚しにくい側面もあり、気付かないうちに蓄積してしまうケースも少なくありません。そのため、心拍変動を継続的に確認することで、体調変化の早期発見につながります。
2015年からは、労働安全衛生法により事業場に対してストレスチェックの実施が義務化されました。
心拍変動による日常的なモニタリングは、ストレスチェックを補完する取り組みとしても有効です。定期的なストレスチェックと組み合わせれば、従業員のメンタルヘルスケアを継続的に支援できます。
以下の記事では、義務化となったストレスチェックの詳細について解説しています。具体的な実施方法も紹介しているので、これから実施を予定している方は、参考にしてみてください。

熱中症リスクの予測に活用できる
熱中症の発症前段階では、自律神経のバランスが乱れることで心拍変動に変化が現れることが知られています。そのため、心拍変動の測定は、熱中症リスクの予測にも活用できます。
熱中症リスクをより正確に把握するには、心拍変動だけでなく、心拍数や深部体温などの生体データをあわせて確認することが重要です。特に深部体温は、医療現場でも熱中症の重症度を評価する指標の一つとして活用されています。
深部体温とは、脳や内臓など身体内部の温度のことです。外部環境の影響を受けにくく、体内の熱の状態を正確に反映しやすいのが特徴です。
以下の記事では、深部体温について詳しく解説しています。熱中症との関係性を深掘りしているので、理解を深めたい方は、参考にしてみてください。

【現場で役立つ】HRV測定機能付きのウェアラブルデバイス3選

ここでは、HRV測定機能が搭載されたウェアラブルデバイスを3つ紹介します。
- MITSUFUJI 03|ミツフジ株式会社
- Band 10 Aluminum Edition|ファーウェイ
- Fitbit Charge 6|Google
順番に見ていきましょう。
MITSUFUJI 03|ミツフジ株式会社

出典:ミツフジ株式会社
「MITSUFUJI 03」は、ミツフジ株式会社(弊社)が提供する猛暑リスクやストレスなどの体の状態を可視化できるスマートウォッチです。建設現場や工場などの猛暑環境で働く方々の声をもとに開発されました。
学校法人産業医科大学、前田建設工業株式会社との共同研究により開発した、着用者の脈波から深部体温上昇および下降の変化を推定・可視化できる世界初の特許アルゴリズムが搭載されています。
従業員の異変をディスプレイ表示とバイブレーションで知らせるため、水分補給や休憩を促しやすくなります。
また、心拍変動解析をベースにした独自アルゴリズムも搭載しているため、猛暑リスクやストレス以外にも、コンディション、集中度などの変化もリアルタイムで把握することが可能です。
e-SIMの搭載により、スマートフォンを介さずにネットワークへ接続でき、取得したデータはクラウド上で一元管理できます。管理画面から複数の作業員の状態を一括して確認できるため、大規模現場での運用にも適しています。
貴社の課題や運用環境に合わせて最適なご提案をいたしますので、お気軽にお問い合わせください。
Band 10 Aluminum Edition|ファーウェイ

出典:ファーウェイ
Band 10 Aluminum Editionは、ファーウェイが提供するスマートバンド型のウェアラブルデバイスです。
睡眠中の平均心拍変動(HRV)を取得できる機能を備えており、日々のコンディション把握や睡眠の質改善に役立てられます。軽量なアルミニウム素材のボディで長時間装着しやすく、日常的な健康管理をサポートする製品です。
スマートフォンとの連携により、取得したデータをアプリで確認できるため、変化の傾向を継続的に追跡できます。
Fitbit Charge 6|Google

出典:Google
Fitbit Charge 6は、Googleが提供するスマートバンド型のウェアラブルデバイスです。
高精度な心拍数測定機能を搭載しており、日々のコンディションの変化を細かく把握できます。取得したデータをもとに算出される「ストレスマネジメントスコア」を確認することで、ストレスの状態や変化の傾向を数値で把握しやすいのも特徴です。
睡眠分析や100種類以上のエクササイズモードにも対応しているため、健康管理からフィットネスまで幅広く活用できます。
心拍変動(HRV)に関するよくある質問

心拍変動に関するよくある質問と回答をまとめます。
心拍変動(HRV)を改善する方法を教えてください
心拍変動の値を改善するには、自律神経のバランスを整える生活習慣を意識することが大切です。
代表的な改善方法は、以下のとおりです。
- 十分な睡眠時間(目安は7時間以上)を確保する
- 適度な有酸素運動(ウォーキング、軽いランニングなど)を取り入れる
- 深呼吸や瞑想などのリラクゼーションを日課にする
- カフェインやアルコールの過剰摂取を控える
これらの取り組みを継続すれば、副交感神経の働きが高まり、心拍変動の値改善が期待できます。
心拍変動(HRV)と不整脈は何が違いますか?
心拍変動と不整脈は、いずれも心拍リズムに関する言葉ですが、意味が異なります。
心拍変動は、健康な心臓でも見られる「正常な」心拍リズムのゆらぎを指します。自律神経の働きによって心拍間隔がわずかに変動している状態で、身体のコンディションを反映する指標です。
一方、不整脈は心臓の電気的活動に異常が生じた「病的な」リズム異常を指します。動悸や息切れ、めまいなどの症状を伴う場合があり、医師の診断が必要です。
心拍変動(HRV)をチェックして従業員の疲労やストレスの具合を把握しよう

猛暑環境や長時間労働によって従業員のコンディションが変化しやすく、疲労やストレスの蓄積が労働災害につながるケースも少なくありません。
心拍変動を継続的にモニタリングすれば、疲労把握・ストレス検知・熱中症リスクの予測など、幅広い場面で活用できます。
例えば、ミツフジ株式会社(弊社)が提供する「MITSUFUJI 03」は、心拍変動解析をベースにした独自のアルゴリズムを搭載しており、ストレスやコンディションの状態をリアルタイムで可視化できます。e-SIMを搭載しているため、クラウドとの連携により、従業員の健康状態を一元管理できる点も特長です。
従業員の疲労やストレスの状態を客観的に把握したい方は、HRV測定機能を備えたウェアラブルデバイスの導入も検討してみてください。





