「自社に安全管理者の選任は必要なのか知りたい」
「資格や届出の手続きがよくわからない」
このような疑問をお持ちの方もいるでしょう。
安全管理者とは、労働安全衛生法第11条にもとづき、一定の業種・規模の事業場で選任する「安全に係る技術的事項」の管理者です。
本記事では、選任基準や資格要件、届出の流れ、仕事内容、衛生管理者との違いを厚生労働省の資料をもとに解説します。ぜひ参考にしてみてください。
安全管理者とは?法律上の役割と位置づけ

安全管理者は、事業場の安全衛生管理体制の中で、安全面の技術的な実務を担う役割です。まずは法律上の位置づけを整理します。
労働安全衛生法第11条は、政令で定める業種・規模の事業場に、安全管理者の選任を求めています。選任された安全管理者は、安全に係る技術的事項の管理を担います。
なお、安全管理者は試験に合格して取得する免許ではありません。学歴に応じた実務経験と選任時研修の修了などを組み合わせて、要件を満たす仕組みです。
安全管理者の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法令 | 労働安全衛生法第11条 |
| 選任が必要な事業場 | 政令で定める業種で、常時50人以上の労働者を使用する事業場 |
| 担う役割 | 安全に係る技術的事項の管理、作業場等の巡視と危険防止の措置 |
| 要件の満たし方 | 所定の実務経験と選任時研修の修了、または労働安全コンサルタント等(研修には経過措置あり) |

安全管理者の選任基準|対象業種と人数

安全管理者の選任が必要かどうかは、「業種」と「事業場ごとの常時使用労働者数」の組み合わせで決まります。専任が必要になる規模もあわせて確認しましょう。
- 安全管理者の選任が必要な業種
- 安全管理者の人数要件「常時50人以上」の数え方
- 専任の安全管理者が必要なケース
安全管理者の選任が必要な業種
厚生労働省のQ&Aでは、選任が必要な業種として以下が挙げられています。これらの業種で常時50人以上の労働者を使用する事業場が対象です。
| 区分 | 業種 |
|---|---|
| 建設・運輸など | 林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業 |
| 製造・インフラ | 製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業 |
| 卸売・小売 | 各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業 |
| サービス | 旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業 |
自社の業種がどれに当たるか判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認すると確実です。
安全管理者の人数要件「常時50人以上」の数え方
人数は会社全体ではなく、工場や支店などの「事業場ごと」に数えます。本社が大きくても、各事業場が50人未満なら選任義務の判定は事業場単位で行います。
常時使用する労働者には、正社員だけでなく日雇労働者やパートタイマー等の臨時的な労働者も含まれます。
派遣中の労働者は、事業場規模の算定では派遣元・派遣先の双方で数えます。ただし、安全管理者の選任義務は派遣先事業場に課されるため、派遣先で選任要否を判定する際に人数へ含めます。
出典:事業場の規模を判断するときの「常時使用する労働者の数」はどのように数えるのでしょうか。|厚生労働省
専任の安全管理者が必要なケース
業種ごとに定められた規模以上の事業場では、安全管理者のうち少なくとも1人を専任とする必要があります。基準となる人数は業種によって異なります。
専任の安全管理者が必要な業種と人数
| 業種 | 常時使用する労働者数 |
|---|---|
| 建設業、有機化学工業製品製造業、石油製品製造業 | 300人以上 |
| 無機化学工業製品製造業、化学肥料製造業、道路貨物運送業、港湾運送業 | 500人以上 |
| 紙・パルプ製造業、鉄鋼業、造船業 | 1,000人以上 |
| 上記以外の選任対象業種 | 2,000人以上(過去3年間の休業1日以上の死傷者数の合計が100人を超える事業場に限る) |
「専属」はその事業場に所属していること、「専任」は安全管理の業務を専門に担当することを指します。安全管理者は原則としてその事業場に専属の者から選びます。
ただし、2人以上選任し、その中に労働安全コンサルタントがいる場合、そのうち1人は専属でなくても差し支えないとされています。
安全管理者の資格要件と選任時研修

安全管理者になるには、原則として学歴に応じた実務経験を積んだうえで選任時研修を修了するか、労働安全コンサルタントであることが必要です。研修には経過措置もあります。
- 安全管理者の資格に必要な学歴と実務経験
- 安全管理者の資格で認められる実務経験の範囲
- 安全管理者の選任時研修の内容と経過措置
安全管理者の資格に必要な学歴と実務経験
必要な実務経験の年数は、最終学歴と理科系かどうかで変わります。厚生労働省のQ&Aに掲載されている区分は以下のとおりです。
安全管理者の資格要件
| 最終学歴など | 必要な産業安全の実務経験 | 選任時研修 |
|---|---|---|
| 大学・高専の理科系課程卒業 | 卒業後2年以上 | 必要 |
| 高校・中等教育学校の理科系学科卒業 | 卒業後4年以上 | 必要 |
| 大学・高専の理科系以外の課程卒業 | 卒業後4年以上 | 必要 |
| 高校・中等教育学校の理科系以外の学科卒業 | 卒業後6年以上 | 必要 |
| 上記以外 | 7年以上 | 必要 |
| 労働安全コンサルタント | ― | 不要 |
このほか、職業訓練課程の修了者に関する区分もあります。該当する方は、個別に要件を確認してください。
安全管理者の資格で認められる実務経験の範囲
「産業安全の実務」は、安全部門の専門業務だけを指すものではありません。行政通達では、生産ラインにおける管理業務を含めて差し支えないとされています。
製造ラインの管理者や現場の監督者として働いてきた方も、経験年数を満たせば対象となりえます。役職名ではなく、担当してきた業務内容で確認するとよいでしょう。
出典:労働安全衛生規則の施行について(昭和47年9月18日 基発第601号の1)|厚生労働省
安全管理者の選任時研修の内容と経過措置
選任時研修の科目は、厚生労働省の通達で以下の4つと定められています。
安全管理者選任時研修の科目
| 科目 | 主な範囲 |
|---|---|
| 安全管理 | 企業経営と安全、安全管理者の役割、安全活動、災害調査など |
| 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置等 | リスクアセスメントとその結果にもとづく措置、マネジメントシステム |
| 安全教育 | 教育計画の作成、教育方法、作業標準の作成 |
| 関係法令 | 労働安全衛生法などの関係法令 |
出典:労働安全衛生規則第五条第一号の規定に基づき厚生労働大臣が定める研修について(平成18年2月24日 基発第0224004号)|厚生労働省
修了者には修了証が交付され、選任報告の際に写しを添付します。
また、平成18年10月1日の施行日までに安全管理者として2年以上の経験がある方は、研修の修了を要しない経過措置があります。
安全管理者の選任と届出の流れ

安全管理者は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署長へ報告します。
- 選任が必要か判定する:業種と事業場ごとの常時使用労働者数を確認する
- 候補者の要件を確認する:学歴・実務経験と、選任時研修の修了状況を確認する
- 14日以内に選任する:選任すべき事由(人数が50人に達した、前任者が退職した等)の発生日から数える
- 選任報告を提出する:様式第3号「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」を遅滞なく提出する
出典:総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医はいつまでに選任し、どこに報告すればよいのでしょうか。|厚生労働省
2025年1月1日から、安全管理者などの選任報告は電子申請が原則義務化されました。厚生労働省は入力支援サービスも提供しています。
出典:労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます|厚生労働省
14日以内に求められているのは選任です。報告はその後「遅滞なく」行います。提出方法の細かな扱いは、所轄の労働基準監督署で確認しておくと安心です。
安全管理者の仕事内容と権限

安全管理者の仕事の中心は、作業場等を巡視し、危険のおそれがあれば直ちに防止措置を講じることです。法律上の職務と、現場での取り組みを分けて整理します。
- 安全管理者の法律上の職務と権限
- 安全管理者の仕事内容の実務例
- 安全管理者とリスクアセスメントの関わり
安全管理者の法律上の職務と権限
安全管理者は、作業場等を巡視し、設備や作業方法等に危険のおそれがあるときは、直ちにその危険を防止するため必要な措置を講じなければなりません。
そのため事業者は、安全管理者に対し、安全に関する措置を行う権限を与えなければならないとされています。
巡視の頻度について、長崎労働局「労働法の基礎講座」では衛生管理者は毎週1回以上、産業医は原則毎月1回と示されています。一方、同資料には安全管理者について、衛生管理者のような定期頻度の記載はありません。
出典:安全管理者について教えて下さい。|厚生労働省
労働法の基礎講座|長崎労働局
安全管理者の仕事内容の実務例
厚生労働省のQ&Aで挙げられている職務と、現場での取り組み例を対応させると以下のようになります。取り組み例はあくまで一例です。
安全管理者の職務と現場での取り組み例
| 法律上の職務 | 現場での取り組み例 |
|---|---|
| 建設物・設備・作業場所・作業方法に危険がある場合の応急措置や防止措置 | 巡視で機械の防護カバーや通路の障害物を確認し、是正まで追跡する |
| 安全装置・保護具などの定期的な点検と整備 | 点検記録を残し、故障時の使用停止と修理の担当を決めておく |
| 作業の安全についての教育・訓練 | 新人や作業変更時に、危険箇所を具体的に示して説明する |
| 発生した災害の原因の調査と対策の検討 | 個人の不注意だけでなく、設備・手順・情報伝達の面からも調べる |
| 消防・避難の訓練 | 訓練の役割分担と記録を整理する |
| 作業主任者その他安全に関する補助者の監督 | 担当範囲と報告・是正の連絡手順を確認する |
| 安全に関する資料の作成・収集と重要事項の記録 | 是正の履歴やヒヤリハット報告をまとめておく |
| 同一場所で他社の労働者と作業する場合の安全措置 | 元請・協力会社と作業区域や連絡手順をすり合わせる |

安全管理者とリスクアセスメントの関わり
選任時研修の科目には、危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)とその結果にもとづく措置が含まれています。
巡視で見つけた危険を一つずつ是正するだけでなく、作業ごとの危険性を洗い出して優先順位をつける進め方です。安全管理者が実施の中心を担う場面も多いでしょう。

安全管理者と衛生管理者などとの違い

安全管理者は「安全」、衛生管理者は「衛生」を担当します。対象となる業種・規模や巡視の定めも異なるため、主な役職を表で比較します。
安全管理者と他の役職の比較
| 役職 | 選任が必要な事業場 | 主に担う領域 | 巡視の頻度(長崎労働局資料の記載) |
|---|---|---|---|
| 安全管理者 | 選任対象業種で常時50人以上 | 安全に係る技術的事項 | 定期頻度の記載なし |
| 衛生管理者 | 全業種で常時50人以上 | 衛生に係る技術的事項 | 毎週1回以上 |
| 総括安全衛生管理者 | 業種により常時100人・300人・1,000人以上 | 安全衛生業務の統括管理 | 定期頻度の記載なし |
| 安全衛生推進者・衛生推進者 | 常時10人以上50人未満(業種により区分) | 安全衛生または衛生の業務 | 定期頻度の記載なし |
| 産業医 | 全業種で常時50人以上 | 医学的見地からの健康管理など | 原則毎月1回 |
50人以上の製造業や建設業の事業場では、安全管理者と衛生管理者の両方が必要です。衛生管理者は免許などを持つ者から選ぶため、要件の確認方法も異なります。
常時10人以上50人未満の事業場では、業種に応じて安全衛生推進者または衛生推進者を選任します。
安全管理者の猛暑リスク対策を補うhamon band

夏場の作業がある現場では、熱中症対策も安全管理者の関心事でしょう。ここでは法令上の措置を確認したうえで、現場の状況把握を補う手段としてhamon band シリーズを紹介します。
- 熱中症対策で事業者に求められる3つの措置
- hamon band シリーズの特徴とモデルの違い
- 安全管理者がウェアラブル導入時に決めておきたいこと
熱中症対策で事業者に求められる3つの措置
2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、一定の条件下の作業について事業者に熱中症対策が義務づけられました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる作業 | WBGT値28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業 |
| 事業者の措置 | ①報告体制の整備 ②重篤化を防止するための手順の作成 ③関係者への周知 |
出典:熱中症対策が義務化されます(令和7年6月1日施行)|熊本労働局
これは事業者に課された措置で、ウェアラブル端末の導入を義務づけるものではありません。体制や手順を整えたうえで、補助的な情報源として活用を検討する位置づけです。

hamon band シリーズの特徴とモデルの違い

hamon band シリーズは、難しい操作は不要で、手首に巻くだけで猛暑リスクや体調変化などを可視化するリストバンド型ならびにスマートウォッチ型のウェアラブル製品です。
産業医科大学・前田建設工業との共同研究で開発したアルゴリズムにより、深部体温変化を推定して猛暑リスクをアラートで知らせます。このうち深部体温の上昇変化の推定は、特許第7175473号を取得しています。
通知方法や管理機能はモデルごとに異なります。
hamon band シリーズと関連モデルの比較
| モデル | 通知方法 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| hamon band S | 3色LED・音・振動 | 通信不要。着用者本人に通知 |
| hamon band V | Sの機能+時計表示 | Sの機能に時計機能を追加。専用アプリとBluetooth接続すると自動で時刻合わせ |
| hamon band N | 画面表示・振動 | LTE通信機能(e-SIM内蔵)。管理画面で一元管理 |
| MITSUFUJI 03(関連するハイエンドモデル) | 画面表示・振動 | 管理画面で一元管理。転倒検知、GPS取得、ストレス・集中度・コンディション情報 |
出典:ウェアラブル製品一覧
hamon band シリーズは医療機器ではなく、参考データを提供する製品です。アラートや深部体温変化の推定値だけで体調を判断せず、本人への声かけや症状の確認、必要な対応につなげてください。安全管理者の巡視や設備点検の代わりにはなりません。

安全管理者がウェアラブル導入時に決めておきたいこと
ウェアラブルを導入する際は、端末の配布だけでなく運用ルールを先に決めておくと現場で混乱しにくくなります。
- アラート時の対応手順:誰に連絡し、どう確認・対応するかを熱中症対策の手順と合わせる
- 端末が使えない場合の備え:未装着・電池切れ・通信圏外のときも機能する連絡と巡視の体制を残す
- データの取り扱い:利用目的、閲覧できる人、保存期間を決め、従業員に説明する
取得するデータの種類と利用目的を確認し、厚生労働省の指針で本人同意が必要とされる情報に該当する場合は、収集前に同意を得ます。取扱規程は衛生委員会等を活用して労使で検討します。
出典:労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針|厚生労働省
まとめ

安全管理者は、一定の業種・規模の事業場で選任する、安全に係る技術的事項の管理者です。本記事のポイントを振り返ります。
- 選任基準は「対象業種」かつ「事業場ごとに常時50人以上」。規模によっては専任が必要
- 資格は所定の実務経験+選任時研修の修了、または労働安全コンサルタント等。研修には経過措置あり
- 選任は事由発生から14日以内。報告は遅滞なく、原則電子申請
- 仕事の中心は巡視と危険防止の措置。事業者は必要な権限を与える
猛暑期の現場では、法令にもとづく体制づくりに加えて、作業者の状態に気づくための情報を補うことも一つの方法です。hamon band シリーズの導入や運用について、お気軽にご相談ください。
▼参考文献
・安全管理者について教えて下さい。|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq1.html
・総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医はいつまでに選任し、どこに報告すればよいのでしょうか。|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09979.html
・労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001281755.pdf
・事業場の規模を判断するときの「常時使用する労働者の数」はどのように数えるのでしょうか。|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09985.html
・労働安全衛生規則の施行について(昭和47年9月18日 基発第601号の1)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb2063&dataType=1
・労働安全衛生規則第五条第一号の規定に基づき厚生労働大臣が定める研修について(平成18年2月24日 基発第0224004号)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb3029&dataType=1&pageNo=1
・労働法の基礎講座|長崎労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/nagasaki-roudoukyoku/content/contents/no35-25090801.pdf
・熱中症対策が義務化されます(令和7年6月1日施行)|熊本労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/kumamoto-roudoukyoku/newpage_01552.html
・労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/kouji/K220331K0010.pdf





